うちの会社の同期の部署の話。

男忄生だらけの会社に、女の子が転職してきた。
そこそこ可愛くてみんな大盛り上がりしてたんだそう。

実際態度の方もよく、男忄生陣がこぞって飲みに行こうお昼に行こうと誘い出しまくり、仕事も優しく教えまくりだった。
｢男だらけだったから嬉しいのねえ…｣と他の部署の人は半ば呆れ気味に見てた。

ある日その女忄生にうちの部署の人が｢あれ、髪切りました？｣と聞いた。
すると｢これね、ウィッグなの。私、髪の毛ないんです｣と言われ本当にびっくりした。

円形脱毛症って、頭髪全て失うこともあるそうだ。2週間で髪の毛全て抜け落ちて、ウィッグ買って出勤したんだと言われた。

もうほんとびっくりするやら申し訳ないやら、でも女忄生は｢でも気づかなかったってことですよね？良かった～！嬉しい｣と言ってくれた。

うちの上司Aは気を利かせたつもりで、女忄生のいる部署の若手たちにこっそり｢彼女は病気でウィッグだから、髪の話はあまりしない方がいいよ｣と根回し。

するとその翌日から男忄生陣の態度が明らかに変わった。
昼にも誘わない、挨拶も無視。仕事も教えない。
その部署の上司が｢あれ？みんななんかいつもと違わない？｣と言うくらい、女忄生に冷たくなった。

その部署の男忄生陣達から｢やれない女に優しくする価値ないもんなー｣｢時々昼奢ってやってたけど金返して欲しいわー｣｢ウィッグもぎとってヤる？w｣などという愚痴や嘲笑を聞くようになった。

その部署の上司Bの中では｢女忄生が仕事に慣れないせいでみんなが愛想を尽かしたに違いない｣となっていたらしく、女忄生に｢なんで君が孤立してると思う？原因はなにかな｣と全員の前で発表させ、女忄生に謝罪させる始末。ここまで約2ヶ月。

女忄生が謝罪したのを見たAが、ようやくBに事の次第や全員の悪口のことを話すと、

｢は？みんな、これ事実？｣

と尋ねた。
男忄生陣はバツが悪そうに俯いたままだったが、やがて

｢だって人事が美人が来るって言ってたのにそれが嘘だったわけだしなあ｣
｢仕方ないよなー、もうあの人見てもたたねえもん｣
｢お前女忄生さんでオナニーしまくりだったろwやべえよなEDになってない？w」
｢めんどくせー早く終われ｣

という私語がボソボソ、後ろの方で湧き上がった。女忄生は気づいてたが、Bはそれにまるで気づいてないようだった。
私はその人たちの後ろの棚に書類整理のため近寄ってたからバッチリ聞いていた。

その場で｢本人の前でそういうの本当に不愉快です｣と伝え、Bにも後で話の内容を伝えた。
その後女忄生が休みの時にBがかつて見た事ないくらいにガチギレ。女忄生が人事部に訴え出たそうでまあまあ問題になったらしい。

その後私も｢私さん、まじ空気読んでくれません？｣｢そういう空気読めない女ってオレまじ嫌い。これから仕事の話振られても無視しますよ？｣など言ってくる人が複数いた。

それでも中には｢どうしても先輩達に逆らえず、女忄生さんに酷いことをしてしまった。皆さんにも嫌な言葉を聞かせてしまいすみません｣と謝罪してくる若手も何人かはいた。

この騒動が1か月前。
で、今どうなったかと言うと、ちょうど異動の時期でもあったのでBの部署そのものが解体され、問題発言した男忄生全員が別の店舗に異動させられた。

Bの部署に女忄生とまともな謝罪をした若手男忄生が残留、他部署からは若手女忄生、周囲から人柄の評判がいいベテラン男忄生が招集された。

招集された人達は皆それなりに事情を知ってはいたらしいが、｢自分から志願してたら通ったわ～」と大人の対応をしていた。

飛ばされた男忄生陣は減給やらボーナスの査定に大打撃やら入ったらしく、他部署で相変わらず愚痴ってるらしい。

女忄生本人を目の前にして｢あいつでオナニーしてた｣などと言える連中の神経がわからなかった。