先祖が地主だったせいか、田舎の実家には蔵がある。
古い物をいろいろ放り込んでいるので、夏休みに遊びに言ったりしてた時は
「危ないから蔵の中には入るなよ?」と爺さん達から口うるさく言われてきた。
 

その爺さんがタヒんで、遺品整理という事で蔵を掃除する事になった。
俺も掃除を手伝うために初めて中に入ったが、確かに子供が遊ぶには
危険なところだった。なにせ、いろんな物を無造作に積み上げているので
ちょっとした衝撃で崩れ落ちてきそうだったからだ。

そんなわけで慎重に荷物を外へ運び出しつつ、掃除を開始。
そんな折、俺は小さな箱を見つけた。筆で「開封厳禁」と書いてある。
黄ばんではいるが、ちゃんと紙で封印されている。

箱の浦には爺さんの名前が書いてあった。…という事は遺品だ。
何が入っているんだろうと思い、紙を破って開けてみた。

干からびた親指と中指が綿の上に並んで入ってた。

俺はしばらく絶句した後、あわてて箱を閉めて他の荷物の中に紛れ込ませた。
誰にも言わず、その荷物と共に蔵の奥の方へと仕舞い込んで、遺品整理は終了した。
10年前の話。婆さんもタヒんで、今は伯父夫婦が実家に移り住んでるが
蔵はまだある。